日記

日記です。

【好きなもの】ThinkPad

自分はThinkPadが好きだ。というか、もはやこれしか使えないといって差し支えない。

 

※楠木教授もThinkPadの記事に出るぐらい好きなようだが、特に意識しているわけではないです…偶然です。

special.nikkeibp.co.jp

 

自らのThinkPad好きを話す前に、簡単に自分のPC遍歴を振り返ってみよう。

 

私が最初にPCを触ったのは高校生(中学生だったかも…)の頃ぐらいに親が買ってきたFM-Vだったと思う。その頃は、まだインターネットをやるにしてもダイヤルアップ回線でやっていて大したページは見られなかった。2ちゃんねるも根暗な人間の巣窟(すくつ)ぐらいにしか思われてなかったし、インターネットそのものがアンダーグラウンドな文化の一部でしかなかったと思う。

 

しばらくすると、FM-Vが古くなってきたので、安いソーテック(知らないと思いますが…)のPCへ買い替え。2,3年して、私が大学に入学した後、入学祝いに自分用のデスクトップとして、VAIOの紫色の洒落たやつを買った。大学4年間は何とかそのVAIOで乗り切り、社会人になったら東芝ダイナブックを買った。振り返ると割とミーハーな気がする。

その後、しばらくして転職して某監査法人に入所するのだが、そこで出会ったのがThinkPadだ。監査法人は基本的にクライアント先に往査して仕事をするのが通常なので、ラップトップは必須の仕事道具である。

 

初めて触ったThinkPadは確かX220という法人向けのシリーズの当時の最新機種だったと思う。最初の感想は、まー使いづらいという印象だった。使いづらさの原因は、なんと言ってもキーボード中央部にある乳首みたいなトラックポイント。このマウスとは全く異なった感触のトラックポイントの操作にかなりストレスを感じた。触ったことのある人なら分かると思うのだけれど、こう、マウスとは違う「ちから加減」が必要なんだよね。

が。

が、である。このトラックポイント、慣れると非常に使いやすい!

 

ポインタのスピードを上げてもマウスのように滑りすぎず、絶妙の位置にポインターを置くことができるし、キーボードの中心部に位置することから、キーボードを叩きながらも非常にスムーズにトラックポイントに移行することができる。マウスを持ち運ぶ必要もないし、そのスペースもいらない、効率的で使い勝手のいいデバイス。。。もはやマウスなんか使ってられません!(※まあ、他のファームも同様だと思いますが、そもそもマウスやらを使わずショートカットを駆使するのが、出来るスタッフの条件だったりするのだけれど…)

 

しかも、Xシリーズはキーボードも大き目で叩きやすく(今は割と小さくなったが…)、ボディは丈夫に作られており、HDも容量が大きく、仕事道具としての機能美を十二分に備えている。Apple製品のようなデザイン的な美しさには欠けるが、ブラックカラーでかつマットなボディは、職人的な仕事道具(スプレッドシートこねるのが大半ですが…)としての良い意味での武骨さを感じさせる仕上がり。

 

このブログも最新マシンであるX1 Carbonで書いているのだけれど、快調そのものであり、何時でも持っていたい相棒って感じのPCです!

www3.lenovo.com

【好きなもの】オニツカタイガーのスニーカー

一橋大学楠木建教授といいう割と有名な経営学者が『閉じる消費』という面白いことを言っている(個人的に共感する部分が多いため、楠木教授の書籍はよく読んでいます)。

 

ameblo.jp

 

閉じる消費を簡単に言うと、人間年を取ると自らの好き嫌いが割とはっきりしてくるため、好きなものを継続的に消費し、新しいものに対して手を出さなくなるということだ。

楠木教授はこの「好き嫌い」というのを非常に重視していて、自らの好き嫌いをはっきりさせることが経営学でも、そして人生においても重要なことだと言っている。

 

そこで私も簡単にであるが、自らの好き嫌いを少しずつ浮き彫りにしていくべく、好き嫌いを記載していこうと思う。ということで、まず手近なもので「スニーカー」。



 

最近…というか数年前からNew Balanceのスニーカーがブームになり、今ちょうど下火になっていると思うが、私も周回遅れでNew Balanceのスニーカーが欲しくなったのですが、今更New Balanceもなあ、と思い似たようなデザインでオニツカタイガーの「アライアンス」というスニーカーを購入しました。

 

デザイン自体はかなりシンプルだが、特筆すべきはその履きやすさ!都会の固いコンクリートを踏みしめるときに、膝にかかる負担がびっくりするぐらい少ないのが分かる!
さすが日本製、機能面は抜群だね!と言いたくなる。

こう考えると、シンプルなデザインで機能美にあふれる商品が好きなのかなと思う。割と合理的というか。

 

【雑感】ストリートファイター3とアウトレイジの音楽

ただの雑感だけれど、『ストリートファイター3』の城の屋上のステージ(リュウのステージかな?)の音楽と、映画『アウトレイジ』のオープニングの音楽が似ている気がする笑。この独特なシンセで不穏なメロディを奏でているあたりが特に。

 

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ウメハラネタでyoutubeをちょっと見ていたのだけれど、『ストリートファイター3』の音楽はなかなかいい。

 

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こちらはアウトレイジムーンライダーズ鈴木慶一。当然、よい。

【書評】『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』遠藤功

 ★★★★★★★☆☆☆

結論を言おう、日本人にMBAはいらない (角川新書)

結論を言おう、日本人にMBAはいらない (角川新書)

 

 日本で有名なMBAというのどこであろうか?慶應、早稲田、一橋、神戸、グロービスあたりであろうか?私自身はMBAホルダーではないし、海外でも日本でもMBAを取得した知り合いはいるが、彼らにMBAの感想や評価を深く聞いたことがないため、実態はわからない。ただ、この本はMBA、特に日本のMBAを目指す人が読んで損はないと思う。

著者の遠藤功氏は外資系のコンサルティングファームであり、元早稲田ビジネススクールの教授である。つまり、日本を代表するビジネススクールの教授がMBAは日本人には必要ないと言っているのであるから、かなり挑発的なタイトルである。

 MBAの価値は私なりに本書を翻訳すれば、大まかに3つあり、「切磋琢磨」「シグナリング」そして「人脈」である。そして日本のMBAはこの3つがどれも中途半端であるため、大して役に立たないし、企業もMBAを評価しない。


米国や英国などの有名な海外のビジネススクールでは、卓越した実務家や研究者を集めて、FTやeconomist、US-NEWSなどの経済雑誌のランキングを上げ、世界中から意欲的で優秀な学生を集める。そんな彼らに厳しい課題や試験を与え、競争させ、議論させ、自らを磨き上げていく(切磋琢磨)。有名企業は著名なビジネススクールの学生を高く評価するため、卒業生は有名企業に高給取りとして雇われる(シグナリング)。そして、卒業生は世界中の有名企業へ散っていくため、ネットワークが形成される(人脈形成)。そしてますますMBAのブランド力が高まり、優秀な教授が学生が集ってくる…こうした好循環を作り上げていっているのが、海外の有名なMBAスクールである。

 

が、一方で国内MBAはそのどれもが中途半端だ。

 

まず、「切磋琢磨」である。海外の有名MBAは世界中から優秀な人材が集まり、彼らと負荷をかけ競争させることで、自らの能力を磨いていく。そこにまず価値がある。

が、そもそも国内のMBA過程は2003年度の文部科学省専門職学位過程を創設したところから始まるのだが、実際大してニーズもないのに供給だけ増やしたため、定員割れの学校が続出した。MBAを閉鎖してしまう学校まである。結果、国内のMBAに入るような人間は将来不安を感じて心の隙間を埋めたがっている中堅サラリーマンか、大して日本語もしゃべれない中国人だらけになり、海外のMBAの様に世界中からエリートをかき集めて、切磋琢磨するという環境と比較するとかけ離れたものになってしまっている。彼らに負荷をかける教授陣も、卓越した実績を残した実務家やTopTierのジャーナルに掲載した研究者はその数が限られているため、なかなか集まらない。そのため、ランキングも上がらない。

シグナリング」の面においても、そもそも中堅サラリーマンの慰め程度のものでしかなく、大して実務の能力が担保されているわけでもないため、有名企業も評価しない。いわんや外資系のコンサルティングファーム投資銀行など高給が約束されている企業である。

結局「人脈形成」の面でも、大したキャリアアップもできず、日系企業のなかで埋もれていき、大した人脈も形成できない。

…と、かなり糞味噌に書いている(当然だが私が書いているわけではない)。

正直プレジデントやらの経済雑誌やネットの与太話では「よく聞く話」ではあり、特段目新しいものでもなんでもないのだが、早稲田MBAの教授でコンサルファームの会長殿がこうして新書として書くと破壊力と説得力がまるで異なるわけである。

早稲田MBA設立までのゴタゴタ(ゲスの勘繰りになってしまうが、正直これが切欠になったのかなという感は否めない)や早稲田MBAの教授が修士論文を盗用して停職処分を受ける(滅茶苦茶…)などの早稲田MBA内部の暴露話なども、それなりに面白く読めるし(部外者ですし)、また、書きぶりは過激であるが、あながち間違った問題意識でもないと感じる。

MBAに限らず、ロースクール、アカウンティングスクール、公共政策大学院など、所謂高度専門職の大学院の迷走っぷりも似たようなものかもしれない。

もし、「ちょっと仕事も慣れてきたのだが、大したスキルも人脈もないし会社も自分も将来が不安だから、大学院でも行こうかな…」と考えている人がいたら、読んで頭を冷やしてみてもいいかもしれない。

 

格闘ゲームのバランス調整とゲームの面白さについて

www.youtube.com


私は今30代中盤のおっさんなのだけれど、私の青春時代に流行ったものの一つとして格闘ゲームがある。残念ながら私は格闘ゲームのセンスも、自らのスキルを磨くだけの十分な資金も時間もなかったため、全くもって素人に近い。だが、強くもなく、勝てもしないのに受験勉強の気分転換がてらに秋葉原や池袋のゲームセンターにちょいちょい行っていた。

この動画で解説をしているウメハラこと梅原大吾とはほぼ同世代で、彼の話すことを懐かしく思うと同時に、とても示唆に富む動画だと思うので、簡単なレビューと自分の思うところを記載していこう。

ウメハラについてはもはや説明不要だろう。伝説的な格闘ゲーマーである。背水の逆転劇を始めとした云々は以下のWikipediaを参照。

梅原大吾 - Wikipedia

 

動画でウメハラは、昨年末リリースされた『ストリートファイター』シリーズの最新作『ストリートファイターⅤ』のアップデートバージョンであるシーズン2で行われたキャラクターのステータス調整について、格闘ゲームの歴史を振り返りつつ、自らの意見を語っている。

 

ストリートファイター』シリーズや『ヴァンパイア』といった格闘ゲームにおいては、数年に1回の割合でバージョンアップが行われてきた。バージョンアップでは新システム、新技、新キャラクターの追加などゲームの機能を拡張する一方で、キャラクター間の強さが調整されるのが一般的である。というのも、格闘ゲームというのはリリースされ、各プレイヤー同士の対戦が行われ、しばらく時間が経つと、使用されるキャラクターに偏りが生じる傾向がある。

最初は各々好きなプレイヤーを使用するが、各キャラクターでは、メーカー側で調整が行われているものの、攻撃力や耐久力、スピード、必殺技の威力や操作性などに差がある。各プレイヤー同士の対戦が進み、対戦経験が蓄積されていくと、強力な連続技・コンボ、バグ等によるハメ技の発見など、想定外の戦術が発見・共有され戦い方が洗練されてくる。結果、徐々に勝ちやすいキャラ(以下、強キャラ)、勝ちにくいキャラ(以下、弱キャラ)が出てきて、それが各プレイヤーで共有される。強キャラを使用しているプレイヤーは徐々に弱キャラに乗り換えるか、ゲームそのものを辞めてしまったりしてさらに強キャラに集中し始める。強キャラはゲーム内のプレイヤーの人口が多くなり、さらに対戦が進み洗練されていき、格差がさらに大きくなり、特定の強キャラへ偏りが生まれる。メーカーとしては特定のキャラへ過度に偏ることはゲームの魅力を削いでしまうと恐れるため、バージョンアップにより調整を行う。強キャラは攻撃力を抑えたり、連続技がつながらないようにしたり、一方で弱キャラはその逆に強化したりする。

こう書いていくと、この調整というのは必然的なものであり、メーカー側の対応といては当然のことだと思う。

 

しかし面白いことに、動画のウメハラの解説を聞くと、話は逆。

 

こうしたキャラ性能を平均化するようなマイルドな調整を行ってしまうと、強いキャラクターを使用していたプレイヤーはその楽しさが失われてしまい、ゲームから離れて行ってしまうため、ゲーム自体の盛り上がりを削いでしまう。
結局、格闘ゲームは各プレイヤーの優劣を競う一方で、使っていて楽しい、楽しい瞬間があるというのが大事であり、格差を是正するために、その楽しさを削いでキャラ性能を調整してしまうと、プレイヤーの絶対数を減らしてしまう恐れがある。なので、強キャラは強キャラでほっておいて、弱キャラの性能や操作性を上げ、各プレイヤーの楽しさを削がないことが大事であると。それでゲームバランスが崩れてしまう結果になっても、各プレイヤーは自らの楽しさが担保されていれば、例え一方的な酷い試合になっても受け入れるだろうと。
結局、各プレイヤーの最大公約数の意見をまとめ上げて、そのゲームの持つ尖った部分を削ってしまうと、結局誰も納得しないという事例であり、他のビジネスにも示唆に富む解説ではないだろうか。

※これを所謂格差論に無理やり応用すると、格差是正よりも経済的な弱者に対するケアのほうが有効という話になる気がするが、まあ、思い付きです。

2016年レビューと2017年目標

あけましておめでとうございます!

 

2016年は年初から8月まで、仕事のほうはかなり大変でした。入社して以来、2番目ぐらいにしんどい思いをしました。1月から3月までは新しいクライアントの業務をこなしつつ、コンサルティング業務をマネージャーと私のほぼ二人で回して、夜遅くまで働くことが多かったです。

繁忙期である4月に突入すると、5月の20日頃の決算発表まで無休で仕事をしました。さすがに頭がおかしくなるかと思いましたが、何とか乗り切りました。

6月、7月、8月も通常業務をこなしつつ、非監査業務に従事し、なおかつ前期の監査調書をまとめ上げるという作業に追われ、あまり休めませんでした。

そして、9月ぐらいになるとかなり余裕が出てくるのですが、そこからプライベートでは転職活動を秘密裏に進め、10月に入り内定が出ました。

とにかく今年は特に年の前半はかなり無茶をして仕事をし、その後倒れるかのように失速したたため、かなり生活のリズムが滅茶苦茶になってしまい、結果精神的に参ってしまいそうになることが多かったように思います。体重もかなり増えてしまいましたし。「健全な魂は健全な肉体に宿る」ではないですが、体調をしっかり管理して健康で居てこそ、精神状態をしっかりと保つことが出来ると思うので、今年はそういった本当にベーシックな部分を見直して、過ごしていきたいと思います。

 

では、昨年の反省を振り返って、今年の目標を以下に記載したいと思います。

  1. 規則正しい生活を送る。
    昨年は本当に寝れるときに寝て、起きれるときに起きるという滅茶苦茶な生活をしていました。ウィークデイに寝不足な状態が続き、休日に取り戻すというのも頻発しており、土曜日は夕方近くまで寝倒す、そういった状態でした。
    当然、あまり体調はすぐれないことが多かったため、今年は7時起床・12時前就寝で平日・休日も過ごしていきたいと思います!
    特に休日に寝だめする生活はしない!

  2. 痩せる
    今、171cm、72kgという肥満体でございます。。。運動は1週間に1回程度ランニングをしているのですが、それ以上に食べる量が多いため、当然の帰結としてブクブクと太って参りました。
    今年は運動量をキープしつつ、食べる量を減らしたいと思います。特に炭水化物と油もの…夜7時以降の食事は避けるようにしたいと思います。

  3. 余計な事をしない
    今年は転職したということもあり、仕事が慣れずかなり忙しくなるのかなと思います。なので、プライベートはゆっくりしたいと思います。具体的には、
    ●無駄な飲み会には参加しない。2次会には参加しない!
    ●プライベートで変なチャレンジはしない!やったこともないスポーツなどにチャレンジしない!
    ●情報を集めすぎない!新しい雑誌などを購入したりしない!
    などなどを心がけたいと思います。プライベートではタスクや情報を増やさないことを心がけます。

  4. 英語をやる
    一昨年に語学留学に1か月程度通っていたのですが、それ以降はなかなか語学に接することができませんでした。毎日少しずつでもいいので、英語に触れていきたいと思います。とりあえずTOEICが850点であったので、900点越えを目標に研鑽していきたいと思います!

  5. 仕事を覚える
    そして、ある意味最重要目標。今年転職し、自分のやる業務や環境ががらっと変わったため、まずはキャッチアップ。当然、覚えるだけでなく、+αが求められるとは思いますが、まずは目の前の仕事をきっちりとやっていきたいと思います。

こんな感じでしょうか?あまり、目標の数が多すぎたり、目標のハードルが高すぎたりすると当然挫折するため、こんな感じで過ごしていきたいと思います。

【書評】『トヨトミの野望』梶山三郎

★★★★★★☆☆☆☆ 

トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業

トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業

 

 

 トヨタ自動車というと、トヨタ生産方式等を始めとして世界的な技術力の高さ、オペレーションの高さ等特筆すべき製造技術にフォーカスされることが多い。しかし、その一方で、創業家である豊田家の影響を強く受ける同族企業という意味を強く持つ。

現時点において、トヨタ自動車の業績は右肩上がりであり、その絶好調である。そしてその豊田を率いるのは豊田家直系のプリンスである豊田章夫氏である。そして、現在のトヨタを世界一の自動車メーカーへと押し上げる下地を作ったのが奥田硯である。もうすでに奥田氏が退いてからはかなり年月が経っており、また奥田氏の拡大戦略が2000年代後半のトヨタのリコール問題を引き起こして以来、彼の業績というのは割と低く評価され、一方で絶好調である現在のトヨタを率いる章夫氏は華やかな評価を受ける傾向があるといえるだろう。

 

著者の梶山氏によるとトヨタを大いに参考にしながらも、他社の内情も取材した上で物語に盛り込んでいるとしている。

※梶山氏に対するインタビューは以下の現代ビジネスに詳しい。

gendai.ismedia.jp

 

が、この本を読み進めていくとほぼ9割方トヨタを参考にしたと言っていいだろう。それほど、トヨタ、むしろトヨタの経営陣の発言をそのままなぞるかの如く発言が多い。

 

物語は、トヨトミ自動車の創業家の社長から武田剛平という生え抜きのサラリーマン社長が就任するところから始まる。武田剛平はサラリーマンながらも豪胆であり反骨精神旺盛な性根から一旦は会社から干されるもの、元社長の豊田章一朗に見いだされ出世ルートに乗り、辣腕を振う…グリーンメーラーとの対決、ダイエン工業と立川自動車の買収、中国進出、F1参戦、ハイブリッド車『プロメテウス』投入の1年前倒し、北米でのピックアップトラック生産等矢継ぎ早に手を打ちトヨトミ自動車を蘇らせていくが、武田のある重要な一手が彼を窮地に追い込んでいく。

一方で、創業家・本家の豊臣統一は能力的には平凡であり、社内では何の才能もないボンボンだと陰口を叩かれる日々を過ごす。しかし、彼は豊臣家の正当な血統を持つプリンスであり、彼は図らずもトヨトミ自動車のトップへ導かれる…というのが話の粗筋だ。

 

本書の面白い点としては、トヨタ自動車の内幕と評価を外にさらけ出したかのようなシナリオだろう。

内幕について最もインパクトが強いのは、武田剛平(奥田氏がモデル)が失脚した経緯である。物語では、武田剛平がトヨトミ家の影響力を排除し、真のグローバル企業へ脱却しようとホールディングスカンパニーの設立を画策しようとしたところ、武田を社長に据えたトヨトミ自動車三代目社長・豊臣新太郎氏(豊田章一郎氏がモデルと思われる)に発覚し怒りを買い、解任されてしまったというシーンである。そして、この新太郎へリークしたのが、武田剛平の右腕的存在であり、武田剛平の後に社長に就く御子柴宏である…で、御子柴のモデルは…と、「え、そうだったの!」と思わせるシーンが多い。

また他にも、トヨトミ自動車が中国政府から合弁工場の設立を打診された際に、それを無下に断った結果中国進出に大きく出遅れてしまったこと、1970年代米国において制定された自動車の排ガスの規制法であるマスキー法など、あまり知らなかった自動車産業の歴史なども知れ、興味深く読み進めることができる(ここでトヨトミ自動車は各下に見ていた“バイク屋”サワダ自動車と技術供与契約を締結することになる…サワダ自動車は…まあ、言わなくなてもお分かりかと)。

大気浄化法 - Wikipedia

また、評価についてはかなり優劣がはっきりしたものとなっている。武田剛平は冷徹な一面を見せながらも豪胆であり名経営者として描かれている一方で、プリンスである豊臣統一は全く活躍の場がないかといえばそうでもないのだが、総合してかなり辛辣な評価であると言わざるを得ない。で、武田の後釜の御子柴も総じて社長の器ではなく、その次の丹波進は数字にしか興味がないコストカッター。創業家の元社長である豊臣新太郎は武田を抜擢する眼力はあったものの、院政を敷きトヨトミへの大政奉還を画策する老獪な策略家といったところ。現実の世界では奥田氏の後任の張氏は最高益を叩き出し、またその後任の渡辺氏は(リーマンショックの影響でGMやフォードが勝手にズッコケたというのもあるが)トヨタを世界一にしたときの社長であり、名経営者と評価されてもおかしくはないと思っていたので、このギャップが面白いと思った。

 

一方でこの作品の欠点なのだが、あまりにもトヨタ関係者の発言を参照したと思わしき科白が多すぎないかと思う。例えば、記者会見でのトヨトミ社債の格付けの格下げに対する怒りの発言や、 リストラに対するスタンスを表明する箇所だ。奥田氏自身がかなり歯に衣着せぬ物言いであったため、現実世界でも割と有名であり、まるでWikipediaを見ているかのように思えてしまい、少し興ざめしてしまう。もう少し削るなりオリジナルな発言でもよかったのではないかと思う。

奥田碩 - Wikipedi

またこの作品は、前述した通り、かなり単純化された二項対立で描かれている。つまり、武田剛平やその周辺にいる人物は能力的にも人間的にも優れた人間として描かれる一方で、それ以外の人間は人間的にも能力的にも劣った人間として描かれる傾向がある。実際のモデルである奥田氏はかなり毀誉褒貶が激しい人間であり、その評価は難しいにも関わらず、かなり一面的にとらえすぎではないかと思える。

※これはこの作品に係らず経済小説全般に言えることなのだが、これはまた別の機会に書くことにしようかと思う。

 

総じて、トヨタ自動車やその周辺の出来事を硬軟含めてサクサク読めるので、読んで損はないかと思う。

 

※最後に、各登場人物が誰をモデルにしたかは以下に詳しいので、参考までに。

biz-journal.jp