【映画評】『ブレードランナー 2049』/独身男性の琴線に響く、女性不在の壮大なSF

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80年代のリドリー・スコット監督の伝説的な映画『ブレードランナー』の続編です。結論から言えば、今年、いやここ2、3年で最もよい映画でした。1枚の絵画のような息をのむ美しい荒廃した近未来の映像を、低音が唸るような不穏な電子音とともに物語を紡いでいき、1秒たりとも飽きさせることはないです。

これはまさに映画館で見るべき映画なので、上映中に大きな映画館でぜひ見てください!

物語は、前作『ブレードランナー』よりさらに未来の話。荒廃しつくした近未来では、レプリカントと呼ばれる人間の労働力の代替として存在する人造人間が人間と共に暮らしている。前時代の遺物である旧型のレプリカントを駆逐するために存在する捜査官、通称”ブレードランナー”であるKは、旧型レプリカントのサッパーを農場で発見し、処分する。その家の近くにあった枯れ果てた木の根元に、昔のレプリカントの骨を発見する。しかし、その骨をよく調べると、妊娠した形跡があること発見。生殖機能を持たないはずのレプリカントが妊娠した可能性に恐怖を抱いたLAPDはその子供を探し出し、無かったものとして探して処分しようと試みる。
一方、レプリカントを製造している巨大企業の社長であるウォレスはその子供を探し出し、レプリカントが生殖能力を持つ可能性に、更なる拡大生産を目論む。
しかし、Kはさまざまな手掛かりを見て一つの疑問、仮説を持ち始める。自分がそのレプリカントの子供ではないかと…

 前述したとおり、薄暗いスモッグや灰のような雪の中に、メガロマニアックな高層ビル群が浮き彫りになってくる様は必見。初代『ブレードランナー』を見た観客の衝撃を知ることはできないのだが、それに近いものは体感できるのではないか?そう思わせるぐらいに圧倒的な映像です。

また音楽も負けず劣らず迫力があり、地鳴りのような重低音が響き渡り、映像とともに観客を圧倒する素晴らしい出来映え。

そして、ストーリーはとても物悲しい。その物悲しさが、独身男性の寂しい心に響くようなものなのです(笑)
例えば主人公であるKが自宅に帰り、食事を摂るシーン。何かパックされた冷麺のようなものを温めて、一皿の簡単な料理を作り、3Dの女の子と喋りながら食べる…日本の現代の独身男性を模したかのような映像であり、何か変な親近感を覚えます(私は2次元の女性とコンビニ弁当食べることはしませんが…)。

家族もいなく、近所づきあいもなく、職場の上司とは仕事以外の関係はなく、自分と同じレプリカントを処分するという矛盾を抱えたまま、黙々と暮らす日々。そんな中に一筋の希望を見つける。「自分はもしかしたら特別な存在かもしれない」という希望。

 

そして、特別でも何でもないという絶望。

 

しかし、それでも前に進むという姿勢。

友達がいなくても、彼女もいなくても、結婚できなくても、最後に信じた道を進む一人のレプリカントに、冴えない独身男性たちは涙するのではないでしょうか?(まあ、ライアン・ゴズリングだから様になっているだけで、冴えないやつは何やっても冴えないかも知れませんが…私含めて…)

が、一方で気になることがもう一つ。

それは、『独身男性に響く』ということの裏返しでもあるのですが、もしかしたら『女性にはさっぱり分からない』ということ。

というのも、この映画、”女性”がほとんど出てきません。

美しくも最高におっかなかったラブはレプリカントであり、任務を遂行する際の彼女は機械や悪魔といった類。次に、同じくおっかないロビン・ライト演じるマダムは男性的な女性であり、3Dのホログラムであるジョイは男性が身勝手に夢想する女性。唯一はマリエットなのだけれど、彼女は娼婦であり、男性の性の対象でしかない。

なので、(男性の私から観ても)あくまでも男性の視点でしか女性を描けていないという気がし、あまり女性が見て共感や感動を覚える造りになっていないのではないかという気がしています。

ただ、繰り返しになりますが、映像は近年稀に見るような美しさであり、テカテカしたCG映像とは一線を画す仕上がりであり、全くもって見て損はない映画です。

圧倒的におススメ。