【書評】『勝ちすぎた監督』中村計

 

★★★★★☆☆☆☆☆ 

個人的に、野球についてはあまり興味がない。プロ野球も夜中のダイジェスト放送で何となく流し見し、地元の球団が負けこんでもそんなに嘆いたりしない。

こんな感じなので、本書のテーマである甲子園も正直、大して興味がない。シーズンが過ぎてはじめて優勝チームを把握する。その程度だ。が、そんな私でも2006年の早稲田実業駒大苫小牧の決勝戦は覚えている。それぐらい、この時の戦いは異質だったし、異常な盛り上がりだった。

 

本書では、その時の敗者である駒大苫小牧の監督、香田誉士史氏のノンフィクションである。香田氏は大学卒業後間もなく、母校・駒澤大学の付属高校である駒大苫小牧に野球部顧問として赴任。90年代半ば、その厳しい気候や北国特有の気質等も影響し、北海道はいまだ甲子園での優勝経験はなく、強豪校との差は大きかった。そんな中で香田監督は異常ともいえる厳しさで高校球児を鍛え上げる。また、彼の野球人としての優れた感性、斬新な練習方法の導入などもあり、徐々に駒大苫小牧は北海道の強豪校として進化していく。そして、2004年、甲子園の頂点に昇りつめ、2005年に連覇、2006年には準優勝と近年稀に見る成績を収め、一時代を築き上げていった。

しかし、優勝する一方で部長の日常的な暴力行為、選手の飲酒・喫煙、それに伴う選抜大会の辞退など、負の側面も明るみに出てしまう。

本書は、長い甲子園の歴史の中で揺ぎ無い歴史を築き上げ墜ちていく過程を、香田監督を中心として、丹念に描いている。

 

特筆すべきは香田監督の異常なまでの厳しさ。北海道の厳しい気候の中での練習。容赦ない罵声。そして暴力。本書では自信も手を上げていたことを告白している。一方で、繊細であり、優れた野球の感性を持ち合わせる。天才の一種なんだろうと思う。

そんな香田監督でも10年をかけ、ようやく甲子園で優勝できるチームを作り上げることが出来た。チームビルディングの難しさを感じる。

 

ただ、個人として、ビジネスマンとして、あまり参考にはならないかなと思う。

 

また、本書の弱い点としてかなり野球のテクニカルタームが多く、冗長に感じる。野球に詳しい人が読めば、面白く感じるかもしれないけど。