【書評】『外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック』山口周

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今勤務している会社は、Wordをほとんど使わない。中途入社社員にマッキンゼーやらBボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)やらコンサルティングファーム上がりの人が一定数いるからか、報告資料や補助的なハンドアウト等、大よそ全てPowerPointで作成する。

 

そこで様々な人が作成したスライドを目にするのだが、まー、千差万別である。グラフやチャートの作り方、メッセージを置く場所、配色、シェイドの使い方…割と「最低限こういう風にしなさい!」というお作法が決まっていて、スライドについては細かい指摘が入る会社だとは思うのだけれど、それでもレベル感はいまいちだ(私もそんなに自信があるほうではないです…)。

 

例えば、職場だとしばしば、上司が作った資料について部下の私が”忌憚無き”アドバイスを求められる。目の前には、レゲエのアルバムのジャケットかのごとくラスタカラーの良く分からないチャート…上司は割と達成感ある顔で「どうかな?なかなか分かりやすいと思うのだけれど…」と言われる。さすがに私も「何がやりたいのかサッパリわかりません」と忌憚なく言うと今後の仕事に支障が出るのは承知しているので、やんわりと「このボックスは削ってもよいのでは…」「色はもうすこし淡いほうが…」「矢印とかを使っては…」と誘導していく。しかし、なかなか改善せず似たような要領を得ないスライドが各所で量産される。

 

ここで、スライド作成が厄介なのは(エクセルもそうだと思うが)、「自分で作っている間に自分の頭が整理されてしまう」ことだ。このため、作った本人は最高にわかりやすい資料を作ったと思い込み、何故他人からみて理解しにくいかが分からない。

これを解決する一つの手段が、「型にはめる」という方法だ。その、「型」を完結に教えてくれるのが、本書だ。

 

 

この手のスライド作成術というのは、一時期雨後の竹の子のように出てきてもはや差別化が難しいと思っていたが、どうしてどうして、簡潔に纏まっていてとても良かった。

テクニックというサブタイトルからどうしてもPowerPointの操作やグラフの細かな描き方が主な内容化と思ってしまうが、内容はテクニックというよりは原理原則、プリンシプルが記載されている。スライドを作成する順番、数値の種類とそれに適したグラフ、メッセージとチャートの軸を整合させる…など、スライド作成の基本が内容だ。

 

本書のまず良い点は、非常に簡素に書かれているという点。ページ数も160ページ程度しかないため、サクサク読める。おそらく多くの人は半日から1日程度で読めると思う。

二つ目は、簡素である一方で情報理論などに基づいたアカデミックな知識を少しずつ盛り込んでいる点だ。

例えば、人間の知覚上、「長さ」と「面積」では、「面積」は差異を知覚する上で劣っている。このため、円グラフはあまり使用するのは限られるべきであるといったアドバイス(BCGでは円グラフ使用禁止らしい、へー)。

はたまた、スライドは左上から右下に進んで視線が移動するため、右上の「強い休閑領域」に重要なメッセージをおかないというグーテンベルグ・ダイアグラムなど、なかなか面白い挿話があり、簡素な割に勉強になるのも本書の特徴だ。

スライド作成の書籍は類書は様々あるけれども、とりあえずこの1冊で「型」を学べばいいんじゃないかと思います!(逆にこの「型」を徹底するのが大変という…)

 

※本書には以下の姉妹版の「作例集」があり、より豊富な事例に触れることが出来る。上記の書籍だけだとイメージが湧きづらいという方はどうぞ。普通に見ていても面白いです。